饗宴「chill moratorium」雑感

銀座のレストラン DisGOONiesで公演中の「chill moratorium」みてきたよ~。初日の1週間前に情報解禁されて、急すぎて流石にいけんわ~アハハと笑っていたのになぜか週末銀座にいた。年々遠征のモチベーションを保てなくなっていて遠方の公演は行き渋りがちだけど、これは本当に観てよかった。こと私に関しては、この作品をみてなかったらこれからのオタク人生に一生後悔がつきまとうタイプの現場だった。これからもオタクの本能に従って生きていこうな…。

 

以下ネタバレ配慮なし私の主観の感想っていうか覚え書きです。1回しかみてないので結構とんちんかんなこといってると思う。

 

 

◆登場人物の整理

登場人物を整理します。こんなところから始めないとわかんないのよ複雑すぎて!!じゃあいきなり核心のネタバレするよ!!

 

ヤコブ - コールドリーディングを使う詐欺師

・ジェルソン・ミーナ - 精神科医

・マーカス・ポヤンスキー - 精神科医、1963年に起こった殺人事件の容疑者

・モーリッツ・クルト - 精神科医、ポヤンスキーの助手、ジェルソミーナの夫、堅物眼鏡男ありがとう!!!!!!!!

ビアンカ・キスケ - 「年頃よ」が口癖のおさげの少女

・ナンシー・アドロフ - ぬいぐるみをもった少女、1963年の事件で死亡

・ハンス・コルターマン - 太った軍人、1963年の事件で死亡

・コール・ランメルツ - 軍人、1963年の事件で死亡

 

二人芝居なのに登場人物多すぎじゃろがい。複数の役を一人で演じる作品も珍しくないですが、この作品に登場する役の肉体は二つだけ。二つの肉体に九つの人格。二人は多重人格者、解離性同一性障害者のお話です。

 

▼二人の演じた役の内訳

凰稀さんが演じる役→ジェルソミーナ(女)・ポヤンスキー(男)・クルト(男)・ナンシー(少女)

荻野さんが演じる役→ヤコブ(男)・ビアンカ(少女)・コルターマン(男)・ランメルツ(男)・ポヤンスキー(男)

凰稀さんが女性の肉体で男性の役をやっている。このヤバさがお分かり頂けるでしょうか。宝塚の男役が退団後に普通の男性の役を演じることは超稀で、ショーの一場面やガラコンで男役姿をみることはあるけど芝居で男性役をやることはほぼない。凰稀さんはチャーリーっていう女体に転生した男性の役はやったけど、あれとこれはちょっと違うんだよな…チャーリーは一応コメディなので…。退団して8年、演技仕事はなるべく観るようにしてきたけどここまで普通に作りこんだ男性役は初めてなんじゃないかな?(みれてないものもあるのでやってたらごめんなさい。みてるのに忘れてたらもっとごめんなさい。)

役の性別や年齢関係なく贔屓の演技は全て好きですが、懐かしくて珍しいものをみれた興奮と驚きとありがたさが先立ちます。大感謝!!

 

・凰稀さん

老医師ポヤンスキーを演じるときの貫禄、まぁるいのに鋭く隙のない目つきやみえない髭をなぞる指先、たまら〜〜ん!!!!!堅物眼鏡クルト先生は登場時の他人を見下したような態度がどんどん崩されてでてくるダメダメ陰気野郎…NTR夫ッ…!きょどった顔もかわいいね…!!!!もはやお家芸といってもいいナンシーちゃんの胸に迫る謎高解像度少女ぶりもジェルソミーナの穏やかな美女ぶりも素晴らしい。全員好き。役者・凰稀かなめさんのフルコース、ごちそうさまでした!!

 

・荻野さん熱い

多重人格者らしく完全に別人を演じ分ける凰稀さんに対して、荻野さんはヤコブとランメルツ以外はヤコブの演じるキャラクターとして登場する。少女や巨体の男性など多少の無理を感じさせる体当たりの演技が楽しい。めちゃくちゃカロリー高くて汗だくで大変そうなの面白い。中盤まで愉快なおじさんをやられている分終盤のギャップがすごくて、ランメルツがでてきたときの表情がマジで怖くて続々した!クライマックス、ちょうどゼロズレで射撃される席だったんだけど、ガッチリ目があう感覚になってそのまま視線を動かせなかった。これは舞台も客席が一体になった空間のせいかもしれないけど、芝居の中でこんなに目が合う感覚になることは珍しい。貴重な体験でした。

 

◾️雑感

二人の多重人格者とかいたけど実際の肉体が一つなのか二つなのかはよくわからなかったな。登場する人格全てがポヤンスキーから生まれた交代人格だと思ったけど、序盤にひっかかる言葉があって。ジェルソミーナ→ポヤンスキーに交代してヤコブと会話しているときは「3人(ジェルソミーナ・ポヤンスキー・ヤコブ)いた」といってたけどナタリーとヤコブが会話しているときは「2人だけ」っていってて…1回しかみてないしよくわかんないや。

 

フェリーニの「道」

会場内にある二つのスクリーンにフェリーニの「道」がちょいちょい流れる。主人公夫妻の思い出の作品として登場し、映画の人物名が人格の一つや持ち物の名前になっていたりする。「劇中に登場する名前が映画の中にでてくる名前と同じ」という仕掛けであり、映画をみてなくても話が進めばわかるようになっている。

 

私が元々この映画を好きであらすじが頭に入っていたので劇中の使われ方は混乱した。映画だとジェルソミーナが置いていかれる側の人間だから…。でも改めて映画を見直すと記憶よりもジェルソミーナがふらふらしててザンパノの痛みもわかるなぁと思った。見え方変わるなぁ。

 

個人的な夢や感慨の話にはなりますが、凰稀さんとジュリエッタ・マシーナってどことなく似てると思っていて、いつかジェルソミーナを演じる凰稀さんをみてみたいなと退団後ずっと思っていたので遠からずも近からず少しだけ接点のある今回の役はとても嬉しかった。この現場を見送ってあとからこの作品の話をきいてたら後悔でオタクあがってそう。スクリーンに映された「道」をみつめる凰稀さんの横顔をみながら、オタクやっててよかったと思った。みれてよかったです本当に。

 

・タイトルの意味

「chill moratorium」直訳すると「冷たい猶予期間」=「冷戦」ってことなんだけど、観終わったあとは散るモラトリアム=猶予期間が散る、モラトリアムの終わりか~って納得してた。ダジャレ!?

 

・っていうか距離エグい

めっちゃ近い。近すぎて泣いた。舞台と客席が一体になっているので当たり前のように自分の隣に御贔屓様が立っていたりする。その距離30cm。こわい。贔屓周辺の空気うまい。

私は基本お芝居の現場しかいかないファンなのでこの距離感で御贔屓様をみるのは数年ぶりだし今後ないかも…冥土の土産にします…。

 

・総括

こんな贔屓やあんな贔屓がみたい!の欲望が顕在しまくるヤバイ舞台でした。もっとみたかった〜!!!あと飯もうまい。酒もうまい。これで15,000円ってコスパよすぎる。帰りにもう一回15,000円払った方がいいのかな?ってなった。こういう公演をうてる箱を持ってるDisGOONiesすごいなぁ。また機会があればお邪魔したい。あーあ、楽しい休日だった。