舞台『BACKBEAT』に向けての自習 ―スチュアート・サトクリフについて

わーい!BACKBEAT西宮公演初日おめでとうございま~す!東京公演序盤にみて以来BACKBEATのことしか考えられなくなった人が悶々としながらスチュについて調べていたときのメモです。私がおさえときたい話しか書いてないので悪しからず…。

 

 

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スーパー顔がいい。

 

スチュアートは1940年にスコットランドエジンバラに生まれ、3歳の時にリバプールに越してくる。5人家族で、美術教師の母と船のエンジニアの父、あと妹が二人いる。父親は航海で長く家を空けることもよくあった。

16歳でリバプール・カレッジ・オブ・アートに入学。開校以来の才能の持ち主といわれ、学校の玄関ホールにはスチュの描いた絵画が飾ってあったりした。コンクールで得た賞金で画材を買っていたとピート弟がいってたのでメチャクチャ優秀な画学生だったっぽい。

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最初のほうはすごい19世紀みたいな絵描いてる。

 

翌年の9月にジョンが同美術学校に入学。ジョンは入学早々授業サボリまくり作品破天荒すぎで学校の成績は最低だった。この頃にはクオリーメンというバンドをやっていて、翌月にはポールが加入する。

「マージー・ビート」の編集者だったビル・ハリーの紹介でジョンとスチュは知り合う。美術学校の優等生のスチュと劣等生のジョン。正反対の二人だったけど、二人はとにかく学校内で目立っていて、それから信じられないくらい気があった。丸一日一緒に過ごすこともあったし、一時はフラットで共同生活してたりする。仲がよすぎて同性愛の噂が流れたりもした。*1

ジョンはスチュのアートの才能に惹かれ、スチュはジョンの音楽的な才能やロックな姿勢に憧れていた。共同生活を始めた頃、スチュはウォーカー・アート・ギャラリー(リバプールにあるめちゃでかい美術館)で開催されたジョン・ムーアズの展覧会に作品を出品する。出品作品の「サマー・ペインティング」は主催者が50ポンドで購入した。

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サマー・ペインティング、たぶんこの絵(画像は映画のBACKBEAT

1960年当時は固定相場制で1ポンド1080円、消費者物価指数が5分の1とかだから日本円で換算すると結構な金額になる。学生の絵にこの額はすごい、マジで。スチュはジョンに薦められ、その金を使ってベースを購入し、ジョンとポールとジョージのバンド「クオリーメン」に加入する。なんでやねん。

 

f:id:koshihikari2000:20190612062340j:plainスチュちっちゃい。

 

ピートを加え、バンド名を「ビートルズ」に改名し、BACKBEATのメイン舞台となるハンブルク巡業へ向かう。カイザーケラーでアストリッドと出会い二か月で婚約する。早ぇ~~!!!


ハンブルクで夜通し演奏しまくるうちに皆技術も向上していったけど、スチュのベースは下手なままだった。ジョンにとっては演奏よりもスチュの存在が大事だったけど、ポールはバンドの実力をもっと高めたかったので、ポールとスチュはベースの演奏についてよく口論をした。*2


その年の冬、ジョージが深夜労働の年齢に達していないことがバレて法律違反で国外追放になる。このときはジョージだけ帰国させられたけど、あとから放火したり*3そもそも全員労働許可を申請してなかったりしたので全員国外追放になる。ムチャクチャやんけ。


国外追放をうけて皆リバプールに戻ったけどスチュだけはアストリッドの家に隠れてハンブルクに残っていた。リバプールビートルズはバンド活動をしていたけどスチュがいないので臨時のベーシストを雇い、そのうちポールがベースを担当するようになる。このへんでビートルズの人気が急上昇する。



そのあと皆から遅れてリバプールに帰ったスチュはちゃんと大学の修士課程を修了して教師になろうとするんだけど、大学に戻ると休学していたつもりが退学になっていた。スチュが学生会の役員をやっていた頃、ジョンの勧めで購入したアンプをバンドのツアーのときにもっていってそのまま返却しなかったのが原因っぽい。どんまい。


リバプールの美術学校には戻れなかったけど、そのときちょうどハンブルグの美術学校の客員教授をしていたエドゥアルド・パオロッティの目にとまり、ハンブルク・ステート・カレッジ・オブ・アートに奨学生として入学する。このあとビートルズは二度目のハンブルクツアーをやるけど、スチュは美術に専念してほとんどステージに立たなくなっていた。ビートルズをやめたあともアストリッドと一緒に毎晩のようにトップテン・クラブに観に行ったり写真をとったりして、ビートルズの活動を応援している。


この、ハンブルクの美術学校にいってからの作品が超~~~かっこいいんだなぁ。「もう一人のビートルズ展」の図録には油彩画からパオロッティがやっていたコラージュの技法を使用したドローイングやらが載っているけど共同制作で彫刻もやってたっぽい。充実してるなぁ~。昼は学校の絵を描き、家に帰っても絵を描き四六時中作品と向き合っていたスチュ。パオロッティはスチュについて「非常に感受性豊かで洞察力があった。決して休むことを知らない子だった。なにか死にものぐるい的なところがあって、恐ろしく自暴自棄なところもあった。あえて言えば、時代の申し子的存在だったかもしれない」と語っている。*4

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最初は鮮やかな色を使って描画していたけど、次第に暗い色を好むようになる。死ぬちょっと前くらいの頃には黒と灰色を中心に制作していて、アストリッドに「この絵が僕の求めている世界へ導いてくれる気がする」と語っている。

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ハンブルクの美術学校に入学した年の暮れにスチュは学校で倒れる。そのあともずっとひどい頭痛に悩まされて3月にもまたでっかい頭痛がきて倒れる。病院にもかかるけどなんの病気かわからない。そのまま容態が悪化してその翌月に亡くなってしまう。死因は右脳出血による大脳性麻痺。アストリッドも同居していたアストリッドの母親もスチュの病気がよくなると信じて懸命にサポートしていたけど、スチュは自分が死ぬことを予期していたのかなぁ…。

 

スチュが亡くなった翌日、ちょうどツアーのためにビートルズハンブルクにやってくる。不謹慎だけどすごいドラマチックな展開…。空港にきたアストリッドから昨日スチュが亡くなったことを知らされるビートルズ。ピート・ベスト・ストーリーでピートは「ジョンは感情をみせない男だけど、その日だけは違ってた。泣き崩れるのを初めてみたよ。」と話している。アストリッドの本で空港で皆が泣いている中ジョンだけは泣かなかったと書いてあったので、ほんと人によって受け取り方違うんだろうな。スチュの遺体はリバプールに運ばれて地元で葬式をするけど、ビートルズはツアーがあるから帰れなくて誰も葬式には参列できなかった。

スチュの死を知ったあとのステージについて、クラウスは「辛い気持ちが伝わってきた。」と、死後数日のライブについてはとにかく異常なあり様だったと語っている。

 

舞台では死ぬ直前にビートルズのデビューレコードを手にしているけど、実際にデビューしたのはスチュの死から半年後だった。デビューシングル「ラブ・ミー・ドゥ」でジョンが奏でるハーモニカはスチュへの哀悼の意味が込められている。

 

 

 

こんなもんかなぁ。

最初にみたときはビートルズのこともスチュアートのこともアストリッドのことも何も知らずにみたけどこの2週間で超部分的な知識を得たので次みるときが楽しみ!!

舞台「BACKBEAT」、6/12~6/15の兵庫公演、6/19の愛知公演どちらも当日券がでるっぽいのでお時間ある方は是非~~!!!詳細→舞台「BACKBEAT(バックビート)」公式サイト

 

 

 あと自習に使った本は以下の感じです。BACKBEAT関連の本はザ・ビートルズ・クラブの皆さんが関わられているのですが、どれも熱量が半端なくてよかった。

・舞台「BACKBEAT」のパンフレット

ページ数少ないけどスチュのベースプレイに関する都市伝説とか、ハンブルクでのビートルズの話とか用語集とか舞台をみるときに知っときたいこと・舞台をみたあとに知りたいことがしっかり盛り込まれていて神

・映画「BACKBEAT」のパンフレット

薄いけど文字がメチャクチャ多い。劇中のシーンを一つ一つとりあげてこのシーンはこういう事実に基づいているとかこういうシーンだけどこういう事実はないとか細かく解説してあって神

・「もうひとりのビートルズ展」展覧会図録

美術に関するスチュアートの話が書いてある。テキストがスチュ中心なのでスチュ担は読むの楽しい。スチュの作品はもちろん、アストリッドが撮った写真も載っている。書簡とかもあるよ。神

・アストリット・キルヒヘア ビートルズが愛した女

アストリットのインタビューから作った本。映画や舞台のもとになったエピソードは大体ここに書いてある。写真ものってて、浜辺で遊んでるジョンとスチュの写真がドチャクソかわいい。神

ビートルズ誕生秘話 ピート・ベスト・ストーリー

ピートのドキュメンタリー。舞台BACKBEATで描かれてる期間=ピートがビートルズに在籍した期間なので当時の感覚とか音楽を追えて面白い。ピートのお母さんすげえ。神

 

*1:アストリッドの本にこのへんの心境についてジョンが話したことが少し書いてあるけど「BACKBEAT……BACKBEAT~~~~~~~~~!!!!」という感じの巨大感情がしたためられているのでぜひ読んでください。BACKBEATの補完ならアストリッドの本が一番最適だと思う。元になるエピソードがほとんど書かれてるので。分厚くて高いので図書館とかにあるといいな…。

*2:ポールがスチュのベースアンプのコードを抜いたりしたこともあるとか、演奏中にスチュがベースをおいてポールに殴りかかったこともあったと言われたりしている。

*3:部屋が暗かったので明るくしようとして火をつけたら騒がれて放火ということになった

*4:「もう一人のビートルズ展」の図録より。この図録、見ごたえも読みごたえもあるのでぜひ手に入れてほしい…。BACKBEATのサブテキストです